- 特に女性の方で、家族や周囲の方で甲状腺機能低下症(特に橋本病)というワードを耳にしたことがある方がいるかもしれません。
- 橋本病は甲状腺に慢性の炎症が起きている病気であり、慢性甲状腺炎ともいいます。橋本病は甲状腺の病気のなかでも特に女性の割合が多く、女性の10人に1人程度といわれるほどで決して珍しくない病気です。年齢別では20歳代後半以降、特に30~40歳代が多く、幼児や学童はまれです。
- 甲状腺はのどぼとけの下にある蝶が羽を広げた形をした臓器で、甲状腺ホルモンというホルモンを作っています。このホルモンは、血液の流れに乗って心臓や肝臓、腎臓、脳など体のいろいろな臓器に運ばれて、身体の新陳代謝を盛んにするなど大切な働きをしています。つまり、甲状腺ホルモンが少なすぎると、代謝が落ちた症状がでてきます。
- 甲状腺機能低下症による症状には、一般的に、無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘などがあります。軽度の甲状腺機能低下症では症状や所見に乏しいことも多いです。甲状腺機能低下症が強くなると、傾眠、意識障害をきたし、粘液水腫性昏睡と呼ばれます。自覚症状は乏しくても、健診での悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が急に増加傾向を示してきて、受診した内科クリニックで発見されることも比較的多いです。また、甲状腺ホルモンは、代謝の調節以外にも、妊娠の成立や維持、子供の成長や発達に重要なホルモンなので、甲状腺機能低下症では、月経異常や不妊、流早産や妊娠高血圧症候群などと関連し、胎児や乳児あるいは小児期の成長や発達の遅れとも関連してきます。
- これらの症状のある方が全員、甲状腺機能低下症というわけではありませんが、血液検査やエコー検査など容易に診断がつき、治療も甲状腺ホルモン補充(チラージンS内服)することで速やかに症状の改善が期待できる病気です。気になる方は一度ご相談ください。
2023.09.25