- 決して肥満気味ではないのに健診でLDLコレステロール値が高い指摘を受けた女性の方の受診がよく見受けられます。そのような方の主な原因がいくつかあります。
- ①家族性高コレステロール血症
- 家族性高コレステロール血症ではLDLを肝臓で取り込む受容体に関係する遺伝子(LDL受容体遺伝子)に異常があるため、血液中のLDLコレステロールが高くなります。10、20歳台など比較的若い時から指摘されている方は可能性が高いです。ヒトは通常LDL受容体遺伝子を2つ持っていますが、このうちいくつに異常がみられるかによって家族性高コレステロール血症にも軽症と重症があります。1つのLDL受容体遺伝子に異常がある場合は軽症で“ヘテロ接合体”と呼ばれ、患者の頻度は200人~500人に1人です。LDL受容体遺伝子2つともに異常がある場合は、重症で“ホモ接合体”と呼ばれ、16~100万人に1人の頻度で発症します。肥満でもないのに、ご両親やご兄弟などにLDLコレステロールの高い方が目立つ方は該当するかもしれません。将来的な動脈硬化(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞)リスクが高いため、治療が推奨されます。
- ②更年期時期の影響
- 女性ホルモンのエストロゲンには、血管の壁にくっついている余分なコレステロールを排除するHDLコレステロールを増やし、体の様々なところにコレステロールを運ぶLDLコレステロールを低下させてくれます。しかし、女性は更年期時期にエストロゲンが減ってしまうので、一般的にLDLコレステロールの数値が上がりがちです。必ずしもその全員がコレステロール降下薬を服用する必要はありませんが、食事運動療法でも改善が乏しい場合は内服薬治療も検討が必要です。
- ③食生活の問題(脂ものというよりも乳脂肪)
- もちろん、脂ものを好んで摂取する方や肥満気味の方はLDLコレステロールは上がりがちです。しかし、特に女性の方で必ずしも脂ものは皆と同じか少ないのにLDLコレステロール高値の方がいます。この場合に要注意は乳脂肪(牛乳や乳製品)かもしれません。ヨーグルトや牛乳、カフェラテ、チョコレートなどの飽和脂肪酸が多い食べ物です。ちなみに、飽和脂肪酸の摂取は18歳以上の男女でエネルギー比率7%以下が望ましいとされています。20歳以上の日本人が1日に摂るエネルギー量の平均は約1900kcalですので、この7%に相当する飽和脂肪酸は約14.8gです。なお、無糖のヨーグルト100gあたりには、飽和脂肪酸が1.83g含まれます。つまりは、小分けのパックは1個約100gのものが多いので、1日に1個無糖ヨーグルトを食べたからといって基準を大きく超えるわけではありません。ただし、肉類を多く食べた日はヨーグルトを控える、牛乳とヨーグルトを同じ日に食べないようにする、なんとなく毎日チョコレートはつまんでいるなど、他の食事とのバランスに注意した方がいいでしょう。
2025.03.22