糖尿病とは
飲食によって取り込まれた糖質は、消化吸収されてブドウ糖になります。食後、吸収されたブドウ糖が血液に入って血糖値が上昇すると、膵臓のランゲルハンス島β細胞からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは全身の細胞にエネルギー源になる血糖を取り込ませ、肝臓でグリコーゲンを合成するなどを促進する作用を持っています。この作用により血糖が処理され、血糖値が一定に保たれます。
インスリンの分泌が減る、作用が弱くなると細胞がエネルギーとして血糖を利用できなくなり、血糖値が高い状態が続いて全身のあらゆる血管に大きなダメージを蓄積させてしまいます。血糖値は食事や運動で大きく変化し、服用している薬剤、感染症などの疾患、手術でも上昇することがありますので、過去1~2ヶ月の平均的な血糖値と相関するHbA1cなどの検査をはじめ、複数の検査で慢性的に血糖値が高いことを確認して糖尿病の確定診断となります。
糖尿病の原因
糖尿病は、1型、2型に大きく分けられ、それ以外にも他の疾患によるもの、妊娠糖尿病などがあります。
1型糖尿病
ウイルス感染、自己免疫異常などによって膵臓のランゲルハンス島β細胞が破壊されてインスリン分泌機能が壊れる自己免疫性、原因不明の突発性に大きく分けられます。どちらもインスリンの分泌量が極端に低下するため、インスリンを自己注射で補うインスリン療法が必要です。日本人は2型糖尿病が圧倒的に多く、1型糖尿病は少ない傾向があります。若い世代の発症が多いですが、高齢になってから1型糖尿病を発症するケースも存在します。
1型糖尿病は、徐々に進行する緩徐進行Ⅰ型糖尿病、発症から数日で急激に血糖値が上昇する劇症1型糖尿病があります。緩徐進行1型糖尿病は、発症からしばらくは食事や運動などの生活習慣でコントロ-ルできるため2型と診断されるケースがありますが、自己抗体の検査を行うと陽性になります。劇症1型糖尿病は、発熱症状を起こした後に発症することが多く、膵臓の自己免疫抗体は見られません。
2型糖尿病
糖尿病全体の95%以上を占めています。遺伝的な素因と生活習慣などの環境要因が関与して発症します。糖尿病の血縁者がいる場合発症しやすい傾向がありますが、必ず発症するわけではなく、糖尿病の血縁者がいなくても発症するケースもあります。生活習慣では、過食や偏食、運動不足、ストレスなどがあり、こうした生活習慣の改善によって血糖値も改善されます。
他の疾患によるもの
内分泌や膵臓の疾患や遺伝子の異常などによって起こる糖尿病です。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常です。
お母さんが高血糖であると、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になり、さまざまな合併症が起こり得ます。
お母さん
妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症・腎症およびそれらの悪化
赤ちゃん
流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡など
食事運動療法でコントロールが不十分な場合はインスリン治療を必要とします。当クリニックでは妊娠糖尿病の妊婦さんへの栄養指導やインスリン治療を行なっています。
糖尿病の症状
2型糖尿病は血糖値が少しずつ上昇するため、早期には自覚症状がほとんどありません。ある程度進行して血糖値が高くなると下記のような症状を起こすことがありますので、心当たりがある場合はできるだけ早めに受診してください。ただし症状がないまま悪化して合併症の症状を起こしてはじめて発見されるケースもあります。なお、深刻な合併症を防ぐためには症状を起こす前の早期発見が不可欠ですから、症状がなくても定期的に健康診断を受けて血糖値やHbA1c値に異常があったら受診してください。
合併症による症状
- のどが渇く
- 水をたくさん飲むようになった
- 尿の量や回数が増えた
- 夜中、トイレに起きる
- 疲れやすい
- すぐ空腹になる
- たくさん食べても体重が減る
- 目がかすむ
- 飛蚊症がひどくなった
- 視力が急激に落ちた
- 手足のしびれや冷え
- 足の感覚が鈍くなった
- 休み休みにしか歩けない
- 足がよくつるようになった
- 傷や炎症が治りにくい
- ED(勃起不全)
など